2006年3月15日水曜日

プレゼンは座ってやるな

コンピュータプレゼンが主流になってから、座ってプレゼンする人が増えた。

パソコンを操作しながらしゃべるので、必然的に座ってやることになるのだ。


だが、これはあまりいい結果につながらない。

座ってやると声が小さくなる。おまけに話者が表面に立たないから、聴いている人間はパワーポイントという名の映画でも見せられている気になる。そのくせ、映画ほど面白いはずはないから始末が悪い。

前回述べたようにこれで電気を消したりしたら、最悪だ。

つまらない映画もどきを暗いところで見せられたら、間違いなく3分の2の人が寝る。


実は、IT関係のプレゼンはほぼ100%この手法だ。話者は座ってパソコンを操作しているし、電気は消される。

だいたいパソコンの操作というものは、自分で触ってみて、自分で悩んでみてはじめて理解できるものだから、プレゼンテーションなんかで分かるはずがない。

そんな訳で、この時間は私の睡眠不足解消の時間となっている。ありがたいことではある。


そんなことにならないために、プレゼンはスクリーンの横に立ってやるべきだ。

必然的に、プレゼンテーターとパソコン操作者は分けなければならない(もちろんリモコンがあればリモコンで操作してもいいし、その方が思い通りにやれていいかもしれない)。


スクリーンの横に立って説明することで、はじめて人間が話しているのを聴いているという状況が生まれる。

さらに、話者が適宜スクリーンを指さして説明することで、世界が立体化する。空気が動く。場にダイナミズムが生まれる。

立ってやることで、無意識に声も大きくなる。ますます場が活性化する。


そういう意味では、レーザーポインタなど使わない方がいい。指し棒か手を使って、出来るだけ大きなアクションでやった方が効果は高い。

身振り手振りも大きく、必ず聴衆の方を向いて話す。聴衆がスクリーンではなく、話者の方を見るようになったら成功だ。


ところで、パワーポイントで作ると、やたらとアニメーションに凝る人がいるが、あんなものは小手先の遊びに過ぎない。

本当は、パワーポイントなど使わない方がいいのだ。でっかい模造紙やホワイトボードを用意して、その場ででっかい文字や図を書いていった方が、絶対プレゼン効果は高い。

細かい話には向かないし、かなりのアドリブ能力と周到な準備を必要とするので、あまり汎用的ではないが。


プレゼンとは資料をきれいに作ることではない。

生身の人間を相手にして、彼らの頭の中にこちらの意図する像を作り出すことだ(さらには、その像を基に議論を活性化させ、新しい結論への道筋を示してやることだ)。

では、相手の頭の中にこちらが思う通りの像を描いてやるには、どうしたらいいのか。

これは、たやすいことではない。人の頭の中をいじることがそんなに簡単にできるはずはない。人の認識を変えるのは難しいことなのだ。


そのためには、考えられる限りありとあらゆる手を使わなくてはならない。

これはある種心理学的な戦いになる。電気を消さない。座らない。レーザーポインタを使わない。これらはすべてそのために必要なことなのである。